白谷清茶堂、5月末日

五月は皐月とよばれますが同時に茶月でもあります。

 雪は降っても積もらなかった今年、春なのに夏と冬の風が吹いた今年。こんな天候を共に戸惑いながら過ごしてきた茶畑と人に最初の茶摘みがめぐってきました。

 農家さんたちは、田植えの時期と毎年重なる茶摘みですが、協力し合い融通し合って茶刈り機をまわし、白い茶摘み袋を鯉のぼりのように青空と新緑の畑に泳がせ、工場に運んでは製茶をしていました。

 手で摘んでも機械で刈っても茶摘みとよんでいます。機械では、前の二人が機械を操り、後ろの一人が袋を調整します。実際に茶樹に刃を当てて刈り採る高さを定める人、エンジン部を支え角度をよんで高さを保つ人、刈り取られ吹き込んでくる茶葉の風圧と重量に耐えながら袋の位置を調整する人。

 どのパートもそれぞれ大変です。前二人のポジションは夫婦者がやることが多く、必ず夫婦喧嘩が起こるそうで、「喧嘩しなけりゃいいお茶はとれん」と風物詩のようにいわれていますが、この機械使用時以来始まった「喧嘩が嫌でお茶をやりたくない」という、たいていは袋持ち係となる子供の意見も侮れません。

 白谷清茶堂として初めての茶摘みは、例年より二週間あまり時を待って始まり、「一番茶」と「台刈り(こちらでは整枝のことをそう呼んでいます)」という二過程を、多くの茶摘みサポーターのおかげで、二週間かけて終了しました。

 一番茶は煎茶になります、いわゆる新茶です。整枝とは、一番茶を摘んだ後の枝を刈り整えて二番茶の芽に備える工程で、刈り残しや一番茶の後から目を覚まして伸びてきた遅れ芽や茎なども無駄にせずもう一回収穫することになります。

 お茶のいろいろな部分が混ざり合って、むしろ一番茶より好きという声をよく聞きます。

 摘んだ茶葉は自分たちで工場のラインを回し、手作業で製茶します。そして、できた荒茶を軽自動車一台に積み込んで、岩国の石原製茶さんに納品してきました。いつも仕上げを担当してくれているパートナー:石原さんの、新しく最上の茶を煎りあげようと常に追及し続ける、発想力と実行力には驚かされることばかりです。

 今年摘んだ私たちのお茶がどのようにおいしくデビューできるのか楽しみでなりません。(文責:村山和之、5月31日)